2025年1月24日、中居正広が芸能界からの引退を電撃発表しました。
昨年6月の性的暴行事件発覚以降、9000万円の示談金支払いと芸能界引退という形で、一連の騒動に終止符を打とうとする動きと見られます。
しかし、本記事で伝えたいのは、示談や引退では決して終わらない刑事責任の重みです。
2017年の刑法改正により、性犯罪は「非親告罪」となりました。
これは、被害者からの告訴がなくても、警察が独自の判断で捜査を開始できることを意味します。
被害女性が「生命の危機を感じるような恐怖を味わった」と証言し、PTSDを発症、手術も必要となった本件は、まさに警察が捜査すべき重大な刑事事件なのです。
本記事では、中居正広の刑事告訴の可能性について、示談が成立していても刑事責任は消滅しないこと、第三者委員会による調査では限界があることなど、検証しながら解説します。
本記事は、示談金による性犯罪の隠蔽という社会問題に一石を投じる重要な転換点となるはずです。
中居正広を刑事告訴できる可能性
強制性交等罪の非親告罪化(2017年改正)改正前後の法律の違い
2017年7月の刑法改正以前は、強姦罪(当時)は親告罪とされており、被害者からの告訴がなければ起訴できませんでした。
しかし、改正後は被害者の告訴がなくても警察による捜査および起訴が可能となりました。
また、男性も被害者となりうることが明確化され、「強制性交等罪」という性中立的な呼称に変更されました。懲役刑の下限も3年から5年に引き上げられ、より厳罰化されています。
非親告罪化の社会的意義
非親告罪化には、性犯罪を個人間の問題ではなく社会全体の問題として捉える意義があります。
被害者が加害者からの圧力や周囲の目を気にして告訴を躊躇するケースが多かったという現実を踏まえ、被害者の負担を軽減する効果があります。
また、示談金での解決を強要されるなどの二次被害を防ぐ効果も期待されています。
被害者の告訴が不要となった背景
改正の背景には、性犯罪の深刻な人権侵害としての性質と、被害申告の困難さへの認識がありました。
被害者の多くが精神的なダメージや社会的なスティグマを恐れて告訴を躊躇する実態があり、それが加害者の不処罰を助長するという問題が存在したのです。
非親告罪化により、警察は被害の申告がなくても、第三者からの通報や独自の端緒により捜査を開始できるようになりました。
中居正広事件においても、この法改正が重要な意味を持つことになります。
不同意性交等罪への改正(2023年改正)暴行・脅迫要件の緩和
2023年7月からの改正では、それまでの「暴行又は脅迫」要件が大きく緩和されました。
改正前は被害者の抵抗を著しく困難にする程度の暴行・脅迫の存在が必要でしたが、改正後は被害者の同意がない性的行為自体が処罰の対象となりました。
これにより、威圧的な言動や立場の優位性を利用したケースなども、同じく処罰の対象になりました。
不同意の立証方法
不同意の立証については、被害者の主観的な意思に加えて、客観的な状況証拠も重要となります。
具体的には、事件前後の様子、メールやLINEなどの通信記録、周囲の証言、医療記録などが証拠として重要視されます。
また、被害者の心理状態や行動についても、性暴力被害者特有の反応(凍り付き反応など)が理解されるようになり、立証のための重要な要素として認識されるようになりました。
新法適用の可能性
本件は2023年6月に発生したとされており、新法施行(2023年7月)の直前の事案となります。
ただし、旧法下でも非親告罪としての強制性交等罪が適用可能であり、被害者が受けた身体的・精神的被害の程度によっては、強制性交等致傷罪(3年以上の懲役)として立件される可能性があります。
また、示談が成立していても、それは刑事責任を免れる理由とはならず、捜査機関による厳正な捜査が求められる状況といえます。
示談が成立しても刑事責任は消滅しない
示談と刑事責任の独立性
刑事責任と民事責任は本質的に異なるものです。
本件で成立した9000万円の示談は、あくまでも民事上の損害賠償の性質を持つものであり、刑事責任を免除するものではありません。
刑事責任は、個人間の損害賠償とは別個の、社会に対する責任として存在します。示談書に含まれる守秘義務条項も、捜査機関による事実解明を妨げる法的効力は持ちません。
過去の判例
最高裁判所は複数の判例で、示談の成立は量刑上考慮されうる事情の一つに過ぎないとの立場を示しています。
検察の起訴判断基準
検察官は、示談の有無にかかわらず、犯罪の重大性、証拠の十分性、被害の程度、社会的影響などを総合的に判断して起訴を決定します。
被害者の心身に重大な影響が生じている場合、検察は公益の代表者として、より厳正な対応を求められるのです。
強制性交等致傷罪の成立要件
強制性交等致傷罪は、被害者の身体や精神に傷害を負わせた場合に成立する、より重い罪です。
法定刑は3年以上の懲役または無期懲役となります。
『中居問題』では、被害者が手術を要する身体的被害を受けたとされる点、そしてPTSDを発症している点から、致傷罪の成立要件を満たす可能性が高いと考えられます。
PTSDなど精神的被害の評価
最高裁判例では、PTSDも傷害に該当すると認められています。
本件での被害者のPTSDは、専門医による診断も受けているとされ、その重症度や継続性から、明確な傷害として評価できます。
精神的被害の重大性は、以下の観点から評価されます。
– 日常生活への支障の程度
– 治療の必要性と期間
– 回復の見通し
– 社会生活への影響
医療記録の重要性
本件における医療記録は、致傷罪の立証において極めて重要な証拠となります。具体的には
– 身体的傷害の診断書
– 手術記録
– 精神科医によるPTSD診断書
– 継続的な治療経過記録
これらの医療記録は、被害の客観的な証拠として、刑事裁判において重要な役割を果たします。
想定される刑事罰の範囲
法定刑の内容
強制性交等致傷罪の法定刑は3年以上の懲役または無期懲役と定められています。
本件では、以下の加重要素が認められます。
– 計画性が疑われる犯行
– 重大な身体的・精神的被害の発生
– 示談による真相隠蔽の試み
– 加害者の社会的影響力の濫用
これらの要素を考慮すると、仮に有罪となった場合、相当程度重い量刑が想定されます。
量刑に影響する要素
裁判所は以下の要素を総合的に判断して量刑を決定します。
加重要素:
– 被害の重大性(PTSDおよび身体的傷害)
– 示談金による口止めの意図
– 社会的地位を利用した犯行
減軽要素:
– 示談金の支払いによる損害賠償
– 前科の有無
– 反省の態度
示談の減刑効果
示談が成立していても、性犯罪における示談の減刑効果は限定的です。
特に『中居問題』では
– 示談金額が高額(9000万円)である点
– 守秘義務条項が付されている点
– 示談が真相解明を妨げる可能性がある点
これらの要素から、示談の存在が必ずしも有利な情状として評価されない可能性が高いと考えられます。
裁判所は、被害者の人権侵害の重大性と社会的影響を重視し、示談の存在にもかかわらず厳正な量刑判断を行う傾向にあるのです。
『中居問題』第三者委員会と示談の限界
調査権限の範囲
第三者委員会は、以下の点で重大な限界を抱えています。
– 強制的な調査権限がない
– 関係者の任意の協力に依存
– 証拠収集能力が極めて限定的
『中居問題』では、示談による守秘義務の存在が、第三者委員会による事実解明をさらに困難にする要因となっています。
証拠収集能力の制限
第三者委員会の証拠収集には以下のような制約があります。
– 物的証拠の強制収集が不可能
– デジタルフォレンジック調査の限界
– 関係者の証言拒否に対する強制力の不在
– 医療機関などからの情報収集の困難さ
これらの制約により、客観的な事実認定が著しく困難となっています。
強制力の不在
第三者委員会には以下の権限が欠如しています。
– 召喚権限
– 証拠提出の強制力
– 虚偽説明に対する制裁権限
– 関係者の証言を担保する法的効力
このため、真相解明や再発防止に向けた実効性のある調査が極めて困難な状況にあるのです。
警察による刑事捜査の必要性
強制捜査の意義
警察による刑事捜査には、以下のような強力な権限があります。
– 捜索差押えの執行
– 関係者の強制召喚
– デジタル機器の解析
– 金融取引記録の調査
これらの権限により、第三者委員会では不可能な徹底的な事実解明が可能となります。
証拠保全の重要性
刑事捜査における証拠保全の意義
– 物的証拠の適切な保管
– 証言の録取と保存
– デジタルデータの専門的解析
– 医療記録の適切な収集
特に性犯罪では、時間経過による証拠の散逸や劣化が問題となるため、早期の証拠保全が極めて重要です。
社会正義の実現
警察による刑事捜査の社会的意義
– 犯罪抑止効果
– 被害者の人権回復
– 同種事案の防止
– 示談による隠蔽の防止
刑事捜査は、単なる事実解明を超えて、社会正義の実現という重要な役割を担っています。
示談が刑事手続きに与える影響
示談の法的効果
示談が刑事手続きに与える影響は限定的です。
– 刑事責任は示談により消滅しない
– 示談金の支払いは情状事実の一つに過ぎない
– 守秘義務条項は捜査機関に対抗できない
被害弁償の意義
示談による被害弁償の評価ポイント
– 被害者の経済的損害の填補
– 精神的苦痛に対する慰謝料
– 示談金額の相当性
– 支払いの任意性と経緯
ただし、高額示談金には被害者の口止めを図る意図が疑われる場合もあり、必ずしも有利な情状とはなりません。
示談内容の評価
裁判所による示談の評価基準
– 示談成立の経緯
– 示談条項の内容
– 守秘義務の範囲
– 被害者の真意
『中居問題』では、守秘義務条項の存在が真相解明を妨げる意図として否定的に評価される可能性があります。
金銭解決の問題点
金銭解決における問題
– 加害者の優越的地位の濫用
– 経済的圧力による被害者の沈黙
– 示談交渉過程での二次被害
– 真相解明の放棄
『中居問題』の9000万円という金額は、こうした問題の存在を強く示唆しています。
守秘義務条項の問題点
– 被害者の表現の自由の制限
– 社会的な問題提起の抑制
– 類似被害の防止困難
– 加害者の免責化
これらは、性犯罪の潜在化を助長する要因となっています。
再被害防止の観点
金銭解決が再被害防止に与える影響
– 加害者の真摯な反省機会の喪失
– 組織的な改善策の欠如
– 社会的な啓発機会の損失
– 類似事案の抑止力低下
このため、金銭解決は一時的な解決に過ぎず、本質的な問題解決にはなりません。
示談と引退では終われない、中居正広を刑事告訴すべきです
中居正広氏の芸能界引退表明は、この問題の一つの節目かもしれません。
しかし、9000万円の示談金支払いと引退だけでは、決して終わらせてはいけない重大な刑事事件としての側面があります。
被害者が「生命の危機を感じる」ほどの恐怖を体験し、PTSDを発症、手術まで必要となった事実は、明らかに強制性交等致傷罪としての捜査対象となりうるものです。
第三者委員会による調査では限界があります。
警察には、示談の有無や加害者の社会的地位に関わらず、徹底的な捜査を行う権限と責務があります。
むしろ、高額な示談金と守秘義務契約の存在は、真相隠蔽の意図として否定的に評価されるべきでしょう。
この事件を単なる芸能スキャンダルで終わらせてはなりません。
警察による厳正な捜査を通じて、示談金による性犯罪の隠蔽という社会問題に一石を投じ、真の被害者保護と社会正義の実現につなげていく必要があります。
『中居問題』を示談や引退で終わらせてはいけないのです・・・中居正広を刑事告訴すべきです。