日産とホンダの経営統合交渉が破談した背景には、日産側の意思決定プロセスの遅さやガバナンス問題が深く関わっています。
この破談は、日産株主にとって将来への不安を増幅させる結果となりました。

本記事では、この統合破談が株主価値に与える影響を整理し、日産が直面する課題と今後の可能性について解説します。
日産とホンダ統合破談の主な理由
企業価値とガバナンスの衝突
ホンダの時価総額は7.9兆円、日産は1.4兆円と5倍以上の差があり、対等な統合は市場から見ても現実的ではありませんでした。

日産側のリストラ計画の遅延
日産のリストラ計画は米国とタイでの生産削減を中心としていましたが、現地の経営陣からの反発により具体的な削減数が「保留」となり、計画の実行が遅れていました。

【日産とホンダ】企業文化の相違
両社は「水と油」と評されるほど企業文化が異なっていました。
ホンダは技術開発重視、日産は官僚的な傾向が強く、この文化的な違いが統合の大きな障壁となったのです。

日産のプライドの問題
日産はホンダよりも長い歴史を持つ自動車メーカーとしてのプライドが統合の障害となりました。

日産の統合破談、致命的な理由
日産側の課題として、リーダーシップの不足と組織的な停滞が統合破談の重要な要因となりました。
日産のリーダーシップの欠如
内田誠社長のリーダーシップ不足は深刻な問題でした。
「決められない男」と社内で評され、将来計画の策定や重要課題の決断を苦手としているため、社長の器ではないとの声も上がっていました。

– 意思決定が遅く、責任分担が不明確な状態が続いていた。
– 他の役員をコントロールできず、社内を完全に掌握できていなかった。
– 工場閉鎖などの抜本的な改革に必要な覚悟が不足していた。
日産内の構造的な問題
意思決定システムの問題
– 指示待ち体質やセクショナリズム(部門間対立)により、現場からの提案が上層部に届かない構造となっていた
– 社内で意見がまとまらず、統合協議においても決断が遅れる結果となった[1]
ガバナンスの機能不全
– 社外取締役や指名委員会が適切に機能していなかった。
– 三部社長と内田社長の間で決めたことが、日産社内ですぐに覆されるなど、組織的な混乱が生じていた。

リストラ計画の遅延
– 追浜工場や横浜工場、メキシコ工場の一部閉鎖など、必要な改革が進まなかった。
– 部品調達においても非効率な慣行が続いており、コスト削減が進んでいなかった・・・などなど。
ホンダの子会社化提案の背景
ホンダと日産の経営実績の差
ホンダは日産と比べて圧倒的な優位性を持っていました。
営業利益は日産の2倍以上、時価総額は4倍以上の差があり、経営基盤は明らかに強固でしたから。
リストラ計画への不満
ホンダは日産のリストラ計画の進捗に強い不満を持っていました。特に以下の点を問題視していました。
– 日産の9,000人削減計画や生産能力20%削減案が具体性に欠けていた。
– 米国とタイでの生産削減計画が現地の反発で「保留」状態となっていた。
子会社化提案の目的
ホンダの狙いは以下の点にありました。
– 日産の経営再建を加速させるため、より強い関与を求めた。
– 「議論の時期ではなく、行動の時期だ」として、迅速な改革の実行を目指した。

ホンダ側による日産との将来的な展望
統合破談後も、ホンダは以下の分野での協力関係を模索する意向を示しています。
– EVのソフトウェア開発
– バッテリー充電サービス
– 基礎技術での協力
これらの提案は、自動車産業の「100年に一度の変革期」に対応するための戦略的な判断でした。
日産統合破談後の展開
新たなパートナー探し
日産は早くも新たな戦略的パートナーを模索し始めています。
特にテクノロジー分野の企業との提携を視野に入れており、台湾のフォックスコン(鴻海精密工業)が有力候補として浮上しています。フォックスコンは以前から日産とのEV製造分野での協力に関心を示していました。

市場での苦戦
日産の市場での新たなポジショニングには、今後とも大苦戦が予想されます。
– 2024年の世界販売台数は前年比4.6%減の380万台
– 中国市場での販売は30.9%減の85万台
– BYDなど中国EVメーカーの台頭による競争激化
ホンダとの統合破談は、日産の経営に対する市場や株主からの信頼をさらに損ねました。
リーダーシップ不足や意思決定の遅さが浮き彫りになり、組織改革も進んでいません。また、北米市場での販売不振や中国市場での競争激化など、外部環境も厳しさを増しています。
これ以上の失策が許されない中で、日産は迅速かつ効果的な改革案を打ち出す必要があります。引き続き、静観していこうと思います。
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