「全体主義」と「権威主義」の違いを徹底解説!中国は全体主義なのか?

私たちの身近にある『自由』という概念。

しかし、歴史上には、この自由を大きく制限する二つの政治体制が存在してきました 。

「全体主義」「権威主義」です。

一見似ているように見えるこれらの体制は、それぞれにハッキリとしたな違いを持っています。

なぜ生まれたのか、どのように機能するのか、そして私たちの社会にどのような影響を与えてきたのか。

本記事では、全体主義と権威主義の本質に迫り、その違いを分かりやすく解き明かしていきます。さらに中国は、全体主義なのか権威主義なのかについても解説いたします。

全体主義と権威主義の違い

全体主義とは・・・全体主義の定義

全体主義とは、政府が国家や国民のあらゆる側面を完全に管理・統制し、国家全体が一つの目標に向かって統合される体制です。

この体制では、国家の利益が個人の自由や権利に優先し、国民は統治者の掲げる理念に従うよう強制されます。通常、政府は権力を集中させ、反対意見を徹底的に排除し、国民の生活、経済、教育、文化などを厳しく管理します。

全体主義の特徴

  • 強力な独裁的指導者
    全体主義体制では、通常、カリスマ的で強力な指導者が絶対的な権力を握ります。リーダーの言葉が絶対的で、国民は従うことが求められます。

  • 統制されたメディアとプロパガンダ
    全体主義政府は、メディアを厳しく管理し、国民が特定の思想や意見に同調するように情報を操作します。プロパガンダを利用して国家の理念を広め、国民の支持を集めます。

  • 反対意見の弾圧
    政府に反する意見や行動は厳しく取り締まり、反対派の弾圧が日常的に行われます。これには、逮捕、投獄、さらには拷問や処刑も含まれます。

  • 全体主義イデオロギー
    全体主義体制は、国民全体に共通のイデオロギーを押し付け、すべての個人がその理念に従うことを求めます。これはしばしば「国家の利益」や「集団の幸福」のためとされています。

 全体主義の例

杉山誠空
全体主義の典型的な例には、ソビエト連邦のスターリン体制や、ナチス・ドイツのヒトラー政権などがあります。これらの体制では、指導者が絶対的な権力を持ち、国民生活のあらゆる側面を統制しました。
ナチスドイツ

権威主義とは何か?権威主義の定義

権威主義とは、国家の支配権が一部の人間や団体に集中し、国民が政治的な権利や自由を制限される体制です。

権威主義体制では、政府が国民の行動を管理し、特定のイデオロギーを推進するものの、全体主義と比べて個人のプライベートな生活には比較的干渉が少ない場合が多いです。

権威主義の特徴

  • 権力の集中と統治者の優位
    権威主義体制では、権力が一部の指導者や集団に集中しており、国民の意思決定への関与が限定されます。

  • 政治的自由の制限
    国民の政治的な自由が制限され、選挙や意見表明の自由がない、もしくは制約されることが多いです。

  • 選択的な抑圧と管理
    全体主義ほど厳密ではないものの、政府に対する批判や反対活動に対しては厳しい措置がとられることがあります。

  • 経済や文化への干渉は限定的
    権威主義体制では、全体主義ほど国民の私生活や文化活動に干渉しない傾向があります。国家が目指すイデオロギーに反しない限り、ある程度の自由が認められることもあります。

権威主義の例

杉山誠空
権威主義の代表例として、シンガポールやサウジアラビアなどがあります。これらの国家では、政治的な自由は制約されているものの、経済活動や個人の生活に対する干渉は比較的少ない傾向があります。

全体主義と権威主義の共通点と影響

①個人の自由の制約
両者とも、国民の個人としての自由が制限される点が共通しています。ただし、全体主義の方がより徹底した制約が見られます。

②プロパガンダとメディア統制
全体主義と権威主義のいずれの体制も、プロパガンダやメディア統制を通じて国民に特定の考え方を植え付ける傾向があります。

③反対派の排除
両者ともに政府への反対者や批判的な意見を排除する手段を持っています。全体主義の方が厳しい手段を用いることが多いですが、権威主義も反対派の抑制を行います。

全体主義と権威主義の歴史的影響

全体主義と権威主義の体制は、それぞれの時代や地域において異なる影響を及ぼしてきました。

全体主義体制では、極端な政治的統制のもとで社会が統一され、一時的な経済成長が見られることもありますが、最終的には破綻することが多いです。

一方で、権威主義体制は経済成長を促進しつつも政治的自由を制限することで長期にわたり安定を維持している国も存在します。

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【全体主義と権威主義の違い】中国は全体主義?権威主義?どっち?

現在の中国は多くの特徴において全体主義的傾向があるとされる一方で、完全な意味での全体主義国家とは言い難い側面もあります。実際には「権威主義的全体主義」とでも言うべき独自の統治体制を持っています。

以下に現在の中国の政治体制を見ていき、全体主義的な側面と権威主義的な側面を比較しながら解説します。

中国の全体主義的特徴

①一党独裁
中国は中国共産党の一党独裁体制であり、他の政党や政治的意見がほとんど認められていません。この体制は、共産党のイデオロギーを中心に国民全体を管理するという全体主義的な要素を持っています。

厳しい情報統制とプロパガンダ
中国ではメディアとインターネットが厳しく監視され、政府に批判的な意見や情報が制限されています。また、政府の意向に沿ったプロパガンダが積極的に展開され、国民は統治者に対する支持を植え付けられるようになっています。

社会信用システムと監視体制
中国には「社会信用システム」という、市民の行動や信用を監視・評価する制度が存在し、政府が個人の生活に直接影響を与える仕組みが整っています。

杉山誠空
この点では、個人のプライバシーがほぼなく、政府が市民生活全般に介入できる体制となっており、全体主義的な特徴が見られますよね。

反対意見の抑圧
政府に反対する意見や活動、特に共産党に批判的な言動に対しては厳しい取り締まりが行われます。特にウイグル自治区やチベットなどでは、民族的・宗教的な少数派に対する弾圧が国際的にも問題視されています。

中国の権威主義的な側面と経済的自由

経済活動の自由
経済面では、改革開放政策以降、市場経済が導入され、民間企業の存在や起業活動が奨励されています。国際的な企業も多く進出しており、全体主義国家のような完全な国家統制経済ではなくなっています。

選択的な社会管理
中国では、経済や国民の日常生活において自由がある程度認められており、全体主義的体制ほど完全な統制は行われていません。共産党の意向に反しない限り、ある程度の文化的・私生活的な自由が存在しています。

限られた「表現の自由」
政治的批判は許されませんが、個人レベルでの不満や文化・娯楽の面では、ある程度の自己表現が可能です。全体主義体制が徹底的に統制するのに対し、中国では共産党の権威に影響しない範囲で一定の自由が許容されています。

中国の体制は「権威主義的全体主義」

中国は、厳格な一党独裁体制と、徹底的な監視や情報統制によって全体主義的要素を持ちながらも、経済的自由や一部の社会活動の余地を残しており、完全な全体主義とは異なる側面も持っています。

そのため、現在の中国は「権威主義的全体主義」もしくは「全体主義的権威主義」と表現するのが適切と考えられます。

この体制により、中国政府は国民の一定の経済的・文化的自由を認めつつも、共産党の絶対的な支配と安定維持を実現しています。

杉山誠空
現代の中国は権威主義的要素を持ちながらも、特に習近平政権下では全体主義的な性格を強めていると言えますね。
中国共産党

【全体主義と権威主義の違い】総括

全体主義と権威主義は、どちらも個人の自由や多様性を制限し、国家や支配者の統治を優先する政治体制ですが、異なる特徴と目的を持ちます。

全体主義は、国家が社会のあらゆる面を統制し、個人の思想や行動を政府のイデオロギーに合わせて統一する体制です。このため、全体主義のもとでは教育やメディア、文化、経済活動も厳しく管理されます。個人の自由は極端に制限され、国民は国家の利益に従って行動することが求められます。

一方、権威主義は政治的な統制を重視しつつも、経済や私生活における自由をある程度容認する体制です。政府は政治的な安定や支配体制の維持を最優先にし、反対勢力の抑制や監視を行いますが、全体主義ほど思想統制に力を入れていません。このため、経済活動や個人の生活に関しては柔軟な面もあります。

杉山誠空
このように、全体主義と権威主義は、個人や社会に対する統制の深さや範囲が異なり、全体主義は全生活領域の管理を目指すのに対し、権威主義は特に政治的支配の安定に重点を置くという違いがあるのです。

現代社会において、全体主義と権威主義の違いを理解することは、各国の政治体制の意図や影響を深く知る上で重要です。

特に、どちらも個人や社会に対する統制を重視するため、私たちはその違いを把握しつつ、民主主義の価値についても考える必要があるのではないでしょうか・・・。

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